性同一性障害か診断テストでチェック!(男性用と女性用)!特徴も
性同一性障害とは、生物学的な性と同一ではない性の意識を持ち、そのことに対して長期に渡って違和感や嫌悪感を持つ障害で、日本ではおよそ2800人に1人の割合で存在すると言われています。
しかし、学校や仕事での影響などを考えて、性同一性障害かもしれないと思いながらも病院に行けずに悩んでいるという人もかなりの数になるでしょう。
また、女性であれ男性であれ、手術などになれば結婚や子供などの将来のことも気になりますよね。
そこで今回は、性同一性障害の特徴的な症状や原因、診断の方法や診断書についての他、FtMやMtFなどの用語や、手術やホルモン療法といった治療法をご紹介するとともに、戸籍などの対応についてもご紹介します。
そして、性同一性障害の男性用・女性用のチェックテストも最後にご紹介しますので、悩んでいる方はぜひ最後まで目を通してチェックしてみてくださいね。
目次
性同一性障害とは?
心と体の性が一致しない病気
性同一性障害(Gender Identity Disorder=GID)とは、生まれた時の体の性別とは違う性別であるという意識を持ち、そのために自分の体に違和感や悩みなどを抱えてしまう病気です。
例えるならば、我々は体と心それぞれに性別を持っており、たいていの場合はそれが一致するのですが、それが一致せずに心と体がちぐはぐな状態となってしまっている、そしてその状態をどうにかして(人によっては医療的な処置を使っても)改善したいと思っている状態であるとも言えるでしょう。
なお、性同一性障害が起こる原因は解明されていませんが、何らかの要因によって脳の一部が体の性別とは違った性別に発達することや、性ホルモンに関わる遺伝子に変異があることなど、いくつかの有力な説が研究によって示されています。
また、2013年にまとめられた調査では、性同一性障害にかかっている人は全国でおよそ4万6千人ほど存在するのではないかとされています。
FtM、MtFとはどんな意味?
性同一性障害にまつわる話の中でよく使われるFtM、MtFとは、生物学的性別と、自分が認識している性別についてを表しています。
ちなみに、FtMはFemale-to-Maleの略で「生物学的には女性であるが認識は男性である」ことを示す言葉で、同様にMtFはMale-to-Femaleの略で「生物学的には男性であるが認識は女性である」ことを示す言葉です。
また、性同一性障害では「一次性」「二次性」という分類もあり、それぞれ一次性は常に性別への意識に揺らぎがない、違和感を持つ時期が幼児期など早い、異性愛者(FtMであれば女性、MtFであれば男性が恋愛の対象となる)状態に対し、二次性は性別への意識に揺らぎがあって違和感を持つ時期が比較的遅い、同性愛者(FtMならば男性、MtFであれば女性が恋愛対象)や両性愛者であると定義されています。
子供の頃から悩む人も多い
性同一性障害では、比較的早い時期から性別に違和感を持つことがあり、日本でも小中学生くらいの頃から自分の性別への違和感に悩むケースが見られます。
しかし、性同一性障害への理解が学校や家族で進んでいないことや、本人がまだ幼いために自分の感じていることをうまく言葉にできなかったりすることなどから精神的に不安定になり、うつや不登校になってしまうといったこともあるようです。
一方で、実際に性同一性障害に悩む生徒のために、異なる性別の名前の「通称」で過ごすことや制服の着用を認めるといった取り組みを行っている学校もあります。
なお、その学校では体育の授業や着替え、トイレなどの学校という場所ゆえに性別を意識しなければならないような場面においても、別室を用意したり、多目的トイレの使用を認めたりといった配慮をしているそうです。
また、それ以外でも、専門家を招いた教師の勉強会や、性同一性障害や同性愛などを授業で扱うための教材作りを行うといった取り組みを自治体単位で行っている場所もありますが、こういった取り組みはまだ始まったばかりの段階です。
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性同一性障害の症状と治療法は?
症状
性同一性障害では、自分の体の生物学的な性別と、自分が認識している性別が一致していないこと、そしてそれを自分の認識している性別に合わせたいという願望から、次のような症状が見られます。
・自分の体の性別を嫌悪したり忌避する
自分は間違った性別の体で生まれたという確信を持っていたり、身体的な性別の特徴である性器や生理現象(月経など)に嫌悪感を抱いたり、それを隠したりすることがあります。
例えば、胸のふくらみを隠したくて、さらしをきつく巻いたりして胸を潰した状態で生活することなどが挙げられます。
また、年齢が低い場合には大人になれば反対の性別の性器ができるという主張をする場合もあるようです。
・生物学的性別とは反対の性別に強く持続的な同一感を持つ
自分の生物学的な性別とは逆の性別、すなわち自分が認識している性別になりたいと強く望み、そのために男性であれば女性の、女性であれば男性の服装をしたりすることです。
また、子供の場合は遊びについても男の子ならば女の子が好む遊びを、女の子ならば男の子が好む遊びをしたがるということがあります。
・生物学的性別とは逆の役割を果たそうとする
日常生活や社会生活においても、生物学的な性別とは逆の性別として行動したり、その性別として期待される役割を果たそうとします。
例えば、言葉遣いや身のこなしといったことや、家事や力仕事などといったある程度性別によって振り分けられる仕事について、自分の生物学的な性別とは逆の仕事を引き受け、自分が認識しているいわゆる「その人にとっての本来の性別」に近づこうとする状態です。
治療法
性同一性障害の治療法には、精神科の領域での治療と身体的治療(ホルモン療法、外科的治療)があり、まずはカウンセリングなどの精神科的な治療から行われ、そこで身体的な治療を行うかを決定していきます。
そして、身体的治療はホルモン剤や外科手術などを通して、実際に肉体を別の性別へと近づけていく治療です。
それでは、それぞれの治療についてを詳しく見ていきましょう。
・精神療法
精神療法では、これまでに性同一性障害のためにどのような思いをしてきたのか、実生活において周りからはどのような対応をされたのかといったことを聞き、今後の対処法を本人と考えて決めていくといったことが行われます。
また、うつなどの精神症状もある場合にはその治療も行って、本人の生活の質(QOL)の向上に努めます。
なお、性同一性障害の診断と重なる部分もあるため、このようなカウンセリングなどの精神科の治療は診断と並行して行われることもあるようです。
そして、最終的には本人がどちらの性別として生きていくのがふさわしいのか、そのためには何が必要なのかを決定することを支援するのがこの治療の目的になります。
というのも、この先の身体的な治療に移ると体が実際に変化していきますが、中には元に戻すことができない変化もあるうえに、治療によってさまざまな副作用が起こる可能性もあるので、冷静な状態で判断・選択をすることが非常に大切だからです。
・ホルモン療法
ホルモン療法では、本人の生物学的性別とは別の性ホルモンを注射などで投与することにより、体を自分が認識している性別へと近づける治療で、見た目の変化を伴います。
具体的には、FtMの人にはアンドロゲン製剤が、MtFの人にはエストロゲン製剤が投与され、それぞれ月経が止まり、体毛が増えたり体つきががっしりとしてくる(アンドロゲン製剤)、精巣が萎縮し、体毛が減ったり体つきがふっくらしてくる(エストロゲン製剤)などのさまざまな変化が現れます。
なお、どちらの性ホルモンを投与した場合であっても、血栓症などの副作用が起こる可能性がありますので、事前に充分な説明やカウンセリングを受けることや、家族など周囲の人々の理解や協力を得ることが必要です。
また、現在は満18歳以上でなければこの治療を受けることはできません。
・外科的治療
外科的治療では、いくつかの条件に当てはまる満20歳以上の人に対し、性器などに外科手術を施すことで自分の体をよりいっそう望む性別へと近づける「性別適合手術」が行われます。
具体的には、MtFの人であれば精巣の摘出や陰茎の切除、FtMの人であれば乳房の切除(これはホルモン療法時に行われることもあります)や子宮・卵巣の摘出などを経て、望む性別の性器を作る複数回に渡る一連の手術のことです。
また、性別適合手術が終了した後でも、骨粗鬆症などのリスクを避けるため、ホルモン療法は生涯続ける必要があります。
そして、MtFとFtMのどちらの人にとっても、この手術を受けることによって子供を作る能力は失われてしまいますし、手術後は本人の体だけではなく家庭や社会における立場も大きく変化するため、事前に本人や周囲の人と治療を行う医療チームとの間でコンセンサスが取れていなければなりません。
診断や治療のためには病院の何科に行くの?
日本においては、複数の診療科にまたがってカウンセリングから性別適合手術までを一貫して行うことのできる病院はほとんどないというのが現状で、多くの場合は性同一性障害に詳しい医師がいる精神科を受診することになるでしょう。
なお、各自治体では症状の相談や医療機関の情報提供などを行う専門の窓口が用意されていることがほとんどですので、お住まいの自治体のホームページなどから確認した上で一度連絡してみることをおすすめします。
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性同一性障害の人の戸籍や結婚は?
性同一性障害の人のための法整備
性同一性障害の人が治療を受けて望む性別へと外見を近づけても、戸籍上の名前や性別といった社会的な肩書を変えることができなければ生活が非常に困難となります。
そのため、性同一性障害の人のために戸籍の変更について以下のように定められています。
・名前の変更
改名を行うためには、正当な事由によって改名するということを家庭裁判所に申し立て、許可を得た上で市区町村役場に届け出なければなりません。
なお、性同一性障害を理由に改名する場合には、医師の診断書を家庭裁判所に提出することになっています。
・性別の変更
戸籍上の性別を変更するためには、次の条件のすべてに当てはまる人が家庭裁判所の審判を経て許可される必要があります。
・20歳以上であること
・現に婚姻をしていないこと
・現に未成年の子がいないこと
・生殖腺がないことまたは生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
・その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外見を備えていること
結婚は本人同士と周囲の理解が大切です
性同一性障害の人が結婚を考える場合、戸籍のことに加えて妊娠・出産のことや両者の家族および親族の理解、周囲の目といったさまざまな障害があります。
なお、性同一性障害は同性愛のような性的志向とは違い、MtFだから男性が恋愛対象であるとは限りませんし、法的に婚姻関係が結べれば不妊治療を行うこともできますので、妊娠や出産、そして養子縁組により自分の子供を持つことが可能なケースもあります。
しかし、日本で法的に結婚するためには性別適合手術や戸籍の変更を伴うため、簡単に決めてしまえるものではありません。
ですので、本人同士にとってどういう選択をするのがベストなのかというのを冷静に決定した上で、時間をかけて周囲にそれを伝えて理解してもらうことと、周囲も偏見を持たずに性同一性障害についての知識を深めつつ対話するという姿勢が大切です。
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性同一性障害のチェックテスト
女性(FtM)向け
女性(FtM)の方向けの自己診断テストは、次のホームページで行うことができます。
このテストは、簡単な質問に「はい」・「いいえ」で答えていくと、最後に結果をメールで知らせてくれますので、難しくありません。
ですので、自分の気持ちに正直に答えるようにしてみてください。
男性(MtF)向け
男性(MtF)の方向けのチェックテストは、次のホームページで行うことができます。
MTF向けの性同一性障害 自己診断テストできました!【2016/12/21リニューアル】 | 女性化ガイド~元男性が女になる方法~
チェックテストによって、自分でも気づいていなかった願望などに気づくこともあるかと思いますので、自分の今現在やこれまでの状況を思い出し、整理しながら回答してみてはいかがでしょうか。
性同一性障害の確定診断は必ず専門医の元で!
さて、性同一性障害のチェックテストについてをご紹介しましたが、気をつけたいのは、チェックテストの結果だけで「自分は性同一性障害である」と思ってしまうことです。
というのも、性同一性障害の診断は、十分な経験を持った複数(通常は2人、場合によっては3人以上)の精神科医がガイドラインに沿って診察を行い、その全員に性同一性障害であると診断されることによって初めて確定するという、非常に複雑で難しいものだからです。
ですので、チェックテストはあくまで参考にとどめ、決して自己判断でホルモン剤の投与や外科手術などを行うことのないようにしてください。
そして、どうしても気になる、悩んでいるという場合には、前の項でご紹介した医療相談窓口などを通じて専門医のいる病院を紹介してもらい、カウンセリングを受けてみることをおすすめします。
まとめ
いかがでしたか。
性同一性障害は、体の性別と自分が認識する性別が違っていることで、精神的・社会的に辛い思いをすることの多い疾患です。
そして、診断や治療には長い時間と体の大きな変化が伴いますし、周囲の反応も気になるので誰にも相談できずに悩んでいるという方も多いことでしょう。
しかし、治療を行ったことでより自分らしく暮らせるようになった方もたくさんいますので、まずは今回ご紹介したチェックテストを入り口として、カウンセリングなどに足を運んでみてはいかがでしょうか。
また、当事者ではなくとも、性同一性障害という疾患への知識を深め、誤解や偏見をなくすように行動していきたいものですね。
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